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周平は二人分の膳を持って、安藤たちの部屋にやってきた。
「……櫻井さん……」
「……ありがとうございます」
名を呼ばれて、璃桜は別れを惜しむように、握っていた手をゆっくりと離す。
握っていなければ、二人が今にもこの世から離れていきそうな予感がしていた。
荒い息遣いの安藤は起き上がることができる。
新田も動くことはできるのだが、二人とも、無理をすれば怪我がもっとひどくなってしまうのだ。
璃桜が部屋に居ないとき、たまに二人は支えあって部屋から出ていく。
やっとの思いで辿り着いた縁側で、空を眺めることが好きだった。
部屋にこもりっきりでは息苦しくなってしまう。
だが最近では、縁側に出向く機会も少しずつ減ってきていた。
「新田さん、起き上がれますか……?」
「……っ……は……い」
顔をしかめて上半身を起こす。
時間は昼。
璃桜は昼餉を食べてもらうために部屋にいた。
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