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頭にライトをつけた卍が匍匐するように狭い穴を進む。
『近所にこんなとこがあるとはね』
「昔よく、捨て猫拾って育てたりしたもんさ」
『林はいいとして、この穴は?』
「俺が掘った。この頃、大脱走に憧れてなぁ。ちゃんと、補強しながら掘ったんだぜ?」
『秘密基地と言う奴だね? 木の上とかには作らなかったのかい?』
「珍しく到達した台風でぶっ飛ばされてここを作ったんだ。しっかし、昔の俺にはもうちょっと気を利かせて広く掘って欲しかったなぁ。中は広いんだが」
『過去に行く機会があったら言ってみるといい』
なんて、話をしているうちに穴の最奥に到達する。
狭い通路を抜けた先はすこし広い空間が。
「おーい、ユウナー。いるかー? ってオォイ!」
そこらじゅうチーズのように穴だらけになっていた。パラパラと土が落ちている。
「ごもたん、すごいんだよ! もぐらさんみたいにいっぱい穴を……」
『いかん、崩れるぞ!』
ズボッ
キャオ?
「ちょ、まじ!?」
カッ
ランプの光だけで薄暗い部屋が強い光につつまれる。
『ふぅ、あぶないあぶない。バリアで穴全体を補強した』
人型の赤い光の固まりからオルドの声。一応、短時間ならこのようにオルドは単独で活動することができるのだ。
すぐにオルドの光はβカプセルにひっこむ。
「はー、驚いたぁ」
「すごかったねー。いまのがウルトラマンだよね?」
「のんきな奴だ。俺達が来なかったら今頃生き埋めだぞ」
『振動破を忘れていたよ。地底怪獣であるゴモラは角を振動させて穴を掘るんだ。まったく、素晴らしい掘削能力だよ。まぁ、私のバリアは幼体では破れないだろうから安心したまえ』
ガンガン
キャオ? キャオ?
ごもたんは穴を掘ろうと土に頭に叩きつけるが、バリアにはばまれてうまく穴を掘れない。
「たまには、外に出して思う存分、穴を掘らせてやれよ?」
「うん」
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