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「ありがとう」
郁は、ミカンを受け取り体勢を起こして一緒にコタツヘ入った。
「………」
「………」
テレビから流れるアナウンサーの声と、10時半を指した時計が、会話の無さを強調するように、静かにカチカチとなっているだけだ。
「…ミカン、甘くて美味しいね」
「そうねえ。でもおばあちゃんは、酸っぱいのも好き」
「うん」
カチ、カチ、カチ、カチ。
私は、おばあちゃんが大好きだ。けれど、おばあちゃんはどうなのだろう。なんだか最近、一線を置かれている気がして…。
ふと、郁は祖母の手首に湿布が張ってある事に気付いた。
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