遊廓にて

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常世の國、吉原―― 明けることのない夜のなかで日々男女が入り交じっている その町のなかにはもちろん格上の店もあれば格下の店もある。その格下の店のなかでも一際異彩を放つ店があった。 「ふぅ……今日はあまりいい女がいなかったなぁ…」男は吉原の常連であり、吉原に来ている男のなかでも上の方にたつ大富豪であった。 久々に吉原にきたはいいものの男の常連の女は他の客に取られていたのだ。彼ほどの地位であればその客をどかすことも出来るのだが彼の性分にそれは合わない。そのためぐるりと一周し女を探していたわけだった 「ったく…うちの連中の鬱憤を晴らすためにきたってのにこうも女がいないとはねぇ…っと!!すまないね」 男が思案しながら歩いていると対向からきた男にぶつかってしまった。その拍子に顔を上げると格子の奥でなんとも綺麗な女が憂い気な顔で煙管を吸っていた。しかしその女の右半分の顔は包帯が巻かれており、髪は銀色で長髪だった。その女のいる周りだけ何か雰囲気が違っていた。 「なんだ…あの女は……」 男の足はひとりでに女のいる店へと向かっていた。
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