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男は潔く襖を開けた。そこには外から見た女がこちらに背を向けて座っていた。そしてこちらを見向きもせずに
「わっちをお買いんすか」
と声を掛けてきた。しかしその声は女の高い声というよりも自分と似たような声質だと思った。
「あぁ…お前は蘭丸か」
「えぇ、そうでありんす。ところで旦那はこの店がどんな店か知ってて入ったんで?」
男は女のいっている意味が理解できなかった。その様子を察してかどうか女が
「わっちの性別は男でありんす。ご存じであったか?」は、この女はつまらない冗談を…と男は思ったがここで取り乱すわけにはいかないときを取り直して
「そう云えと店主からいわれているのか。お前みたいに綺麗なものが男であるはず…??どうした」
女はくっくっと肩を震わせながら笑いだした
「……なにがおかしい」
「いえ…旦那はなにも知らずにここへ…ふふっ、ここは男娼の店ですよ。男だけの店でありんす」
「そうだったのか……確かにここへくるまで女の匂いがしないと思った」
「帰るなら今のうちですよ、旦那。もっとも旦那にそういう趣味がおありなら別ですけどねぇ…」
そう。ここは男が男を買う場所だったのだ。男は些かびっくりした表情を見せていたがしばらくすると我を取り戻したようであぁ、と一言だけ吐き出した。
「どうしました、今なら引き返せますよ」
「いや……買おう」
「お買いんすか」
「あぁ」
男娼は驚いた表情を見せた。
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