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「とにかく、皆様が桜華様の言葉に従っていらしたのであればお聞きしたい」
道重が淡々と話す。
「綾鷹様の婚約者で、承諾を得たということで宜しいのでしょうか。
聞いたところ、綾鷹様を女性と思われていたようですが」
道重が確認したいことはこれだ。
綾鷹が同姓とわかったうえで彼らの真の言葉を聞きたいのだ。
「正直驚いているってのもあるけど、彼は両性気質だろう?それなら何ら異存はないな」
豊久は優しく、綾鷹を見て云った。
「まあ、俺も同じ意見だな」
「そうですね、」
続くように國光、茂盛が頷く。
「子が産めんなら、どっちでもいいんじゃねえの」
にやにやしながら綾鷹を舐める様に眺める昂揚。
道重はそれを視線で咎め、守るように綾鷹の前に立つ。
「……問題ない、」
「うん、いいと思う」
淕號と和清の肯定も確認して、道重は深くため息をついた。
「そうですか。では、これからのことをお話しましょう」
***
九頭龍家の正門を一人の男が通り過ぎる。
「相変わらずの雰囲気だな、」
声は道重に似ている。
「さて、お姫様に会いにいきますか」
手に持った赤い、薔薇の花束を振り、男は家の中へ。
***
焦っていないと云えば嘘になる。
だが、自分がしっかりしなくては余計な心配をかけさせてしまうだろう。
道重はすぐ隣室で休む主を想った。
***
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