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*** 4年後
綾鷹15歳。
あの長い黒髪もバッサリと切り、
身長は小さいながらも骨格は男性そのものだ。
綾鷹は母親の寝室に居た。
時々こうして掃除をしてやらないと、部屋ごと崩れてしまう。
押入から何もかもを取り出し、思い出を眺める。
「……何だ?」
その片隅に、古めかしい帳簿のようなものを見つけた。
パラパラとめくり、中を覗く。
それは家系図のような、一族の名が全て記されたものだった。
ふと、自分の名前を見つけ手を止めた。
「これ、」
綾鷹は目を見開いた。
「綾鷹様、ここにいらしたんですか」
「道重、」
咄嗟に振り返り、綾鷹は道重を見上げた。
「どう、したのですか」
眼鏡のブリッジを押し上げ、様子のおかしい綾鷹に道重は近づいた。
「これ、知っていたか」
「これは一族の……?」
綾鷹に見せられ、彼の示す先を見る。
主人の名前を見つけその右側を見れば、目を見張るものが書かれていた。
「婚約者候補……!?」
「知らなかった、のか」
「あたりまえです、」
綾鷹は安堵の息を漏らした。自分の知らないところで道重が、と疑うところだった。
「いえ、これはもしかしたら桜華様が……」
「母様?」
「ええ、桜華様が内密で決めていたのかもしれません」
綾鷹を娘として育てていたのだから、娘の婚約相手に誰かを選んでいたとしたら。
「でもこれ、六つの名がある」
「……候補者が六名ということでしょうか」
二人は候補者の名前を見つめた。
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