91人が本棚に入れています
本棚に追加
総本家から出た、六の家。更には表と裏とで分かれて、今では対立している。
正直今の今まで関係を結んでなかったのが事実。
表分家は天童家・巴家・早乙女家。裏分家は九鬼家・秋鹿家・不破家の三家。
どの家も負けず劣らずの家柄だ。
その六の家から一人ずつ、婚約者候補があげられていた。
「なるほど、花守人の家系ですか」
道重は一人呟いた。その隣に綾鷹の姿はない。
あの後、道重は一人候補者について調べていた。
「桜華様、」
貴女はどこまで、綾鷹様を縛れば気が済むのか。
道重は唇を噛み締めた。
九頭龍家は代々花人だった。
男は男性の、女は女性特有の香りを持ち生まれる。結婚もまた同族でしか認められていない。
中でも綾鷹は異質だった。
男性として生まれながら、女性特有の香りを持ち合わせていた。
こういった両性気質はごく稀で、それでも確率はないに等しい。
そういう意味でも綾鷹の存在は珍しかった。
その花人を守るのが花守人の家系。婚約者候補たち六の家だ。
花守人もまた香りを持っている為、花人と同類。花人との結婚も認められるのだ。
花人たちは香りをもってして子孫を残す。
男性の身体でも、女性特有の所持者であれば子を産むことも可能なのだ。綾鷹のように、
「あの方に、誰かとの子を産めというのか」
道重の声は酷く重苦しい。
自分の中に、黒い何かが生まれるのがわかった。
それが何なのかは理解したくなかった。
道重は静かに身を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!