花守人

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 総本家から出た、六の家。更には表と裏とで分かれて、今では対立している。  正直今の今まで関係を結んでなかったのが事実。  表分家は天童家・巴家・早乙女家。裏分家は九鬼家・秋鹿家・不破家の三家。  どの家も負けず劣らずの家柄だ。  その六の家から一人ずつ、婚約者候補があげられていた。 「なるほど、花守人の家系ですか」  道重は一人呟いた。その隣に綾鷹の姿はない。  あの後、道重は一人候補者について調べていた。 「桜華様、」  貴女はどこまで、綾鷹様を縛れば気が済むのか。  道重は唇を噛み締めた。  九頭龍家は代々花人だった。  男は男性の、女は女性特有の香りを持ち生まれる。結婚もまた同族でしか認められていない。  中でも綾鷹は異質だった。  男性として生まれながら、女性特有の香りを持ち合わせていた。  こういった両性気質はごく稀で、それでも確率はないに等しい。  そういう意味でも綾鷹の存在は珍しかった。    その花人を守るのが花守人の家系。婚約者候補たち六の家だ。  花守人もまた香りを持っている為、花人と同類。花人との結婚も認められるのだ。  花人たちは香りをもってして子孫を残す。  男性の身体でも、女性特有の所持者であれば子を産むことも可能なのだ。綾鷹のように、 「あの方に、誰かとの子を産めというのか」  道重の声は酷く重苦しい。  自分の中に、黒い何かが生まれるのがわかった。  それが何なのかは理解したくなかった。  道重は静かに身を伏せた。
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