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書面に寄れば婚約者候補は綾鷹16歳の誕生日にやってくるという。
「一週間後だな、」
暦を見て、綾鷹は自分の生まれ日を確認した。
「綾鷹さま、」
「道重、何故そんな顔をする」
綾鷹は眉間に皺を寄せた。
ここで自分が名を呼んでやらなければ、今にも崩れそうだ。
「いえ、貴方は……覚悟を?」
綾鷹は頷く。
「これが母様の決めた事なら、喜んで受け入れよう」
「そうですか、」
「道重?」
さっきから口数の少ない道重を、綾鷹は不安に思った。
彼の両手を掴み、包み込む。
どうした、と問いかける。
「すみません、心配をかけさせてしまいましたね」
「道重、」
「大丈夫ですよ。何があろうと、私は貴方の味方です」
主人の右手を掴み、手の甲に軽く口付けた。
―貴方がそう決めたのなら、私は従います―
呟いた言葉は、綾鷹にも聞こえない程の声で。
道重は深く、深く、その身に刻んだ。
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