5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「…樹くんて、暁ちゃんが好きだよね。」
「――…はっ?」
不意に、圭織が無表情でぼそりと呟いた。
「なにいってんの、そんなわけ…」
「そぅ…かなぁ…。」
一瞬、口を歪める圭織。
暁の第六感が、警鐘をならした。
様子が…いつもと違う?
暁は圭織の奥に潜む気配を探ろうと、目を凝らした。
「ー…っえ?」
一瞬、目に留まったルビー色の影。
なぜか暁の心臓がドクンと跳ねた。
「…暁ちゃん?どうかした?」
「――――…い、いや。なんでもないよ。」
ただ、それは本当に一瞬のことで。
我に返った時にはそれはなにも見えなくなっていた。
暁はとりつくろうように微笑むと荷物を持ち直していった。
「とりあえず、いくつかよさそうな日連絡してよ。樹も連れて行くからさ。みんなで遊ぼう。」
「うん、いつもありがとうね、暁ちゃん。」
そういって笑った佳織はいつもどおりだった。
「いや、とんでもない。応援してるから♪がんばれ!」
「うん!」
「それじゃぁ、このあと約束があるからいくわ。」
「あ、忙しいのにごめんね。またね。」
「うん、また!」
そういって暁は愛車の停めてある駐輪場へ急いだ。
今のこと、とりあえずおじさんに相談して見るかな。
歩き去る佳織をチラッと振り向いて、暁は足を速めたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!