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「――――以上です。明日はテストだから心しておくように。解散!」
トライドが名簿ノートをパタンと閉じた音で我に返る。
ラルフが「帰ろー」と言ったからカバンを持って席を立とうとした時、トライドが声を張り上げた。
「ユキーそういえば理事長が呼んでたわよ、何かしたのかしら?説教じゃないことを祈ってるわ、じゃ、また明日」
理事長…?
説教じゃないことを祈ってるわ…って、トライドは内容を知らないのか…?
何で理事長なんかが俺を呼ぶのだろうか………
何か怖い。うん怖い。
だって未知の世界だもの。
「だって、ラルフ。先に帰っててくれ」
ラルフは少し悩んだあと、
「んーじゃー待ってるー!」
と、俺の席に座って言った。
「よし、すぐ終わらせてやる」
俺がそう言った頃には、ラルフは机に伏してすでに寝ていた。
どんだけお眠さんなんだと思って教室を出て、賑やかな廊下を一人で歩く。
今更ながら、俺はあんなラルフが好きだ。元気で明るくてお調子者で、落ちこぼれの俺を元気づけてくれる奴で。
前なんか
「落ちこぼれ!何でお前よりちっせー奴に守られてんだよ!ばーか!何も言い返せてねぇーじゃん!」
と初等部のとき、俺をいじめていた奴に、
「ユキは落ちこぼれじゃないもん!ユキはやさしーから何も言わないだけだもん!相手を傷つけないために何も言わないんだもん!それが分からないあんた達の方がバカ!バカバカバカ!」
と、守ってくれたのを今でも鮮明に覚えてる。
しかもラルフの母さんと俺の母さんが友達だから、小さい頃からずっと一緒なんだ。
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