序章

16/127
前へ
/225ページ
次へ
魔王「アレは説明の半分なんだ。確かに物流が以前よりは  活発になった。以前は国民の半分が餓死するような国の  隣では大豊作の国があり、協力なんてしなかったからね」 勇者「うん……」 魔王「だが、物流が改善されたとはいえ、この世界の  食料生産そのものが劇的に向上した訳じゃない」 勇者「……?」 魔王「判らないのかい? ……つまり、まだ餓死者は  いるんだよ」 勇者「ああ。旅の途中でいくつもの村で、飢えた子供を見たよ」 魔王「そんな世界で、『大戦争による死者』が居なく  なったらどうなる? 長い戦争で剣を振るう以外に  生きる術を知らない何十万人もの人間が中央大陸に  あふれるんだ。彼らは生きているから食料を必要とする。  人間は増えるぞ? ――でも、食料はそこまで増えない。  この世界にはまだ輪作の概念すらないんだ」 勇者「そんな……」 魔王「それが現実なんだ」
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!

386人が本棚に入れています
本棚に追加