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(あれからその後の話)
同窓会直後。
「……で、どうするんだ?」
「どうする、とは?」
「俺の婚約者。浮気でいーとか言ったらブッ殺すから」
そうだ、井上はこんな奴だった。
やたら手が早くて口が悪い。
それからムードをぶち壊す、KYなとこがある。
「話すしかねぇーよな……」
「……マジか」
「当たり前だろ。こればっかはしょーがないじゃんか」
苦虫を噛み潰したような顔。
結婚を約束したオンナだ。
並々ならぬ情があっても仕方ない。
そう思うと、本当にこれは正しいのか自信がなくなる。
井上が好きだ。
幸せになってほしい。
井上が俺を好きなら、俺を幸せにしてほしい。
結局は自己満足に近いこの感情。
だけど、例えば何時か、俺と井上が離れるとしたら?
そしたら、それなら。
今離れたほうが、身のためじゃねーか。
「んー、じゃ、覚悟決めたんだな?
俺の親にも、恋人にも、殴られる覚悟はあるんだな?」
ニィ、と何が楽しいのか井上の唇が笑みを模る。
「じゃ、俺もお前に殴られる覚悟をしよう」
悪戯が成功したガキみたいな笑顔。
そうだ、こんな笑顔が大好きだったんだ、俺は。
「俺に婚約者なんていねーよ」
……は?
「昨日フラれた」
………はぁ?
「“あたし、二番目になるつもりはないの”
……だってよ」
くしゃり、と破顔するその顔を、見つめる俺はきっと間抜け顔だ。
こんな幸せあっていいのか?
「お互い、ねちっこいなぁ、透」
いや、あっていい。
そうじゃなきゃ困る。
「さぁ、殴るか?透」
「……覚悟しろ?井上。
俺を騙した罪は思い。
明日は足腰立たねぇと思え」
「!……!?」
途端に真っ赤になる顔に思うのは。
「上等だ!」
やっぱり誰よりも強いアイラブユー!
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