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(出席番号9番 川垣啓介)
「ったく、こういうキャラじゃねんだよ俺」
「はいはい、頑張った頑張った」
グズグズと涙を流す永宮を慰める役目。
そんな嫌な役目。
それが高校時代の俺、川垣啓介の役目だ。
「結婚おめでとう?
そんなこと考えたこともねぇよ!」
「よく言えたね、大人になったよ永宮は」
「好きだった?
俺はまだ好きなんだよ!」
「……はいはい、よくできたって、かっこよかったよ」
変な間が空いてしまった。
同窓会途中。
親友だった小諸と引き離され別の椅子に座らせられたと思ったら開口一番、「慰めて」のこの台詞。
高校時代、どれだけ俺がこの言葉に苦しまれたか、コイツは知らないし、別に知らなくていい。
「あー、でもちょっとスッキリした」
「それはよかった」
「アリガト、川垣」
その笑顔に、何回救われたか。
「俺、ゲイなんだ」って言った俺に、変わらない付き合いをしてくれたのはお前だけだったから。
今も、昔も。
スッキリした顔をしてソファーから立ち上がる永宮を見上げる。
昔は、お前を恨んだりした。
俺の気持ちなんか考えないで一人だけ楽になろうとするお前を、恨んで、そして恋してた。
時は過ぎて、気持ちを明かすことのできなかった初恋は優しくて痛いけど、それでもいい思い出なのは。
コイツを好きでよかったと言えるのは。
「……透!」
「……なんだよ……」
「頑張れよ、男前」
ニィッと笑って、傷ついても進むお前だったから。
あ、それと。
「けぇーすけぇー?」
「あんだよ?」
「……初恋が振り返した、なぁんて言うなよ?」
「言わねぇよ、お前を愛しちゃってンのに。
な、小諸」
・・・
親友だったコイツのおかげ。
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