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「――さ、―――や、さ…、た……やさん!田宮さん!」
「……う、」
ゆさゆさと体を揺さぶられ、田宮と呼ばれた少年は薄く瞼を上げる。が、再び瞼は落ち、彼は夢の中へと誘われていった。
「もう…田宮さん、眠いのは分かりますけど早く起きて下さい。じゃないと、局中法度違反で切腹になっちゃいますよ?」
「起きます!」
次の瞬間、光の速さの如く少年は布団から飛び起きた。
田宮は自分を起こしてくれた人物を視認した瞬間、ピシリと固まる。ニコニコと笑っている自分の目の前にいる人物とは裏腹に、田宮の心中はダラダラと冷や汗をかいていた。
「お早うございます、田宮さん」
「…オ、ハヨウゴザイマス、沖田組長」
ギギギ…とまるで古戸を開く時のような動きで、田宮は自分の直属の上司である沖田を見た。当の本人は相変わらずニコニコと笑っているだけだ。
田宮は居住まいを素早く正し、起こしてもらった事に礼をすると、朝の身支度を始めた。
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