本日、とある平隊士の一日

4/6
前へ
/16ページ
次へ
  カンカンと竹刀が交わる音と、キュッキュッと足と床が擦れる音。競り合ったり離れたり竹刀を交じり合わせたり、二人の稽古は田宮の一つ前に稽古をしていた隊士の時間を、当に超えていた。 田宮は体勢を低くし、下から竹刀を振り上げる。沖田はそれを一寸先で躱し、既に引いていた竹刀を彼に向かって一線する。そのまま竹刀を振りかぶり、上段から思いっきり田宮に向かって振り下ろした。田宮はその攻撃を両腕で竹刀を支え防ぐ。そのまま間合いをとるため竹刀を一線凪ぎ、沖田の竹刀を弾いた。 「っつ……!組長、今の本気でやりましたね!?」 田宮は沖田を軽く睨み、叫ぶ。 竹刀を持つ手は、先程受けた沖田の斬撃でビリビリと痺れていた。それは彼の攻撃が重たい証拠だ。田宮の冷たい視線を受ける彼は飄々としている。 「やだなぁ。本気も何も、出してませんよ」 「(嘘つけ!)」 ニコニコと笑っている沖田に心中で毒を吐くが、それは心に押し止めた。腐っても上司、失礼な物言いは良くない。 「でも、流石田宮さんですね。さっきのあれを受けきれるなんて。という訳で、もう一本!」 更にもう一回と要求する上司に田宮はこの鬼畜野郎!と思わず叫びそうになる。助けを求める様に他の一番隊士達に目を向ければ、皆諦めろと言わんばかりの返事が返ってきたのだった。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加