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カンカンと竹刀が交わる音と、キュッキュッと足と床が擦れる音。競り合ったり離れたり竹刀を交じり合わせたり、二人の稽古は田宮の一つ前に稽古をしていた隊士の時間を、当に超えていた。
田宮は体勢を低くし、下から竹刀を振り上げる。沖田はそれを一寸先で躱し、既に引いていた竹刀を彼に向かって一線する。そのまま竹刀を振りかぶり、上段から思いっきり田宮に向かって振り下ろした。田宮はその攻撃を両腕で竹刀を支え防ぐ。そのまま間合いをとるため竹刀を一線凪ぎ、沖田の竹刀を弾いた。
「っつ……!組長、今の本気でやりましたね!?」
田宮は沖田を軽く睨み、叫ぶ。
竹刀を持つ手は、先程受けた沖田の斬撃でビリビリと痺れていた。それは彼の攻撃が重たい証拠だ。田宮の冷たい視線を受ける彼は飄々としている。
「やだなぁ。本気も何も、出してませんよ」
「(嘘つけ!)」
ニコニコと笑っている沖田に心中で毒を吐くが、それは心に押し止めた。腐っても上司、失礼な物言いは良くない。
「でも、流石田宮さんですね。さっきのあれを受けきれるなんて。という訳で、もう一本!」
更にもう一回と要求する上司に田宮はこの鬼畜野郎!と思わず叫びそうになる。助けを求める様に他の一番隊士達に目を向ければ、皆諦めろと言わんばかりの返事が返ってきたのだった。
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