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「浩司、今年中に結婚式する予定だったけど、来年になってもいいかな?」
そんなことを彼女がいいだしたのは籍を入れ、関係各所に挨拶をすませ、二人で彼女の住むマンションで暮らし始めた10月のある日のことだった。
「いいけど、どうした?」
「あと、少し仕事辞めるの早めようと思うの。私辞めても大丈夫だよね?」
「大丈夫だけど…つーか、一応養えるくらい蓄えあるし」
「それに煙草なんだけど私と一緒にいるときだけでいいからやめることできる?」
本当にどうしたというのだろう。
彼女の顔を見ても何も読み取れない。
ただ穏やかに笑っている。
「芽衣子、どこか悪…」
「2ヶ月」
「え…?」
「来年には私も人の親かぁ」
「え…あ…」
「浩司も父親になるんだよ」
「こ…こども?」
彼女は満足そうに笑う。
頭を抱え、整理をすると喜びが込み上げてくる。
俺は煙草の箱を潰し、ごみ箱に投げ込んだ。
彼女とこどもの為ならこんなもん止めてやる。
今は、何よりも先に抱きしめて“ありがとう”を伝えようと思うんだ。
...end
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