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重罪だっていうのはわかっている。手を貸した俺も、きっと死刑だ。
応援を呼ぶつもりはない。だけど、いずれバレる。気づかれてしまう。
王様もそこまで馬鹿じゃない。
だけど、それをわかっていてなぜ俺が扉を開けたのかといえば、それはネコタが俺に似ていたから、と答えることになるだろう。
俺は、背負わせたのだ。自分ができなかったことを。彼に。
最低ですね。
とはいってもさ。もう長くない命だ。
それくらいは、許されていいだろう?
なあ――
「本当にもらっていきますよ」
ターミナルから出てきたネコタは、甘い甘い歯の溶けてしまいそうなチョコレートを二枚手にしていた。
「いいよ」
せいぜい頑張って逃げるんだな。そう忠告する俺に、
「……あんたは、どうするんです」
「どうもしねえよ。逃げるのもダルいしな」
「……そうやって、また自分を捨てるんですか」
「あ?」
壁に背を預けて座り込んでいた俺に、ネコタはなにかを投げてきた。
歯の溶けてしまいそうな甘い甘いチョコレートだった。
「受け取ってください。それは報酬です」
「報酬?」
「そう。共犯の報酬」
「……俺に」
くれるのか。ネコタは首を縦に振る。そして言うのだ。
「僕は逃げます。あなたも逃げてください。
「いろんなことから逃げてください。
「暗い過去から、逃げてください。
「明るい未来へ、逃げてください。
「きっと、つかめるはずですから」
「……俺には、」
無理だよ。もう明るい場所へは飛び込めないんだ、きっと。
「嘘つかないでくださいよ」
明るい場所へなんて、行ったことないんじゃないですか? 見透かしたようにネコタは笑う。そして、
「僕は行きますよ。
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