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「明るい未来へ、行きますよ。
「僕は生きますよ。
「明るい未来で、生きますよ。
「返しきれないかもしれないけど、とりあえずできることを、彼女のためにやりますよ。
「そして、明るい未来へ行って、生きますよ」
「……そこへいけない奴はどうしたらいい?」
「……どうしても無理なら、そうですね。便利な道具があるじゃないですか」
ネコタはそう言って、俺の腰の辺りを指さした。
「ホルスターの中の黒いので頭撃ちぬいて脳天まき散らして死ねばいい」
それじゃあ。片手を挙げたくらいにして、ネコタは去って行く。
俺に背中を向けて。
「クソッタレが」
なかなかいい事を言ってくれるじゃないの。
俺はホルスターから拳銃を取り出し、自らのこめかみに押し当てる。
そして引き金を引いた。
かちん。間抜けな音が響く。
「あの野郎……」
無駄撃ちさせやがって。
弾切れだった。
「……なるほどね」
こういうパターンもあるのか。
「……ふっ、くくっ」
あはははは。笑ってみたら、その声は想像以上に響いた。
今日は三月十四日。
まだ生きている。
甘い甘い、歯の溶けてしまいそうなチョコレートを手に、俺は生きていた。
たった、一人で。
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