お菓子業界の陰謀の活用法について

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   誰もいない校庭。  歩いていると学校の端にある校舎からトランペットの音が聞こえてくる。  そこにあるのは私達吹奏楽部の小さな部室。  部室のドアを開けると、松井が一人で演奏してるのがすぐに目に入った。  彼はしばらく曲を続けていたが、私に気付くと楽器を置いた。  「よう。お疲れ、とんま」  わざわざ届け物をしに来た人に対してあまりにも酷い扱い、という訳ではない。  なぜなら゙とんま゙は私自身で広めたあだ名だからだ。  藤間 紗香。それが私の本名である。  しかし同じ学年に゙さやがという名前の人が複数いたため、何か特別なあだ名を、と思った。  いろいろ考えた結果、゙とうま゙から一文字換えだとんま゙が一番しっくりきたのだ。  そして誰もが゙とんま゙と親しみを込めて呼んでくれ、゙頓馬゙であるという私の欠点は、いつしか立派なチャームポイントとなった。  「それより日曜はどの部活も活動しちゃいけないんだから、演奏してるの顧問に見つかったら怒られるよ」  「バレなきゃ大丈夫だろ」  散らかった部室の足場を探しながら、彼の所へと進む。  「松井それ仮にもリーダーの言うことじゃ」  そこまで言いかけて、私は足下にあったらがらくたに蹴躓いた。  「ふぎゃ――」  私の間抜けな声が響き、盛大にぶちまけた書類が宙を舞う。  顔を上げると、松井が白い目でこちらを見ていた。  「何だよぉ」     「別に…………」  別に、と言いつつ尚も白い目。  「文句があるなら言えよぉ! 腹から声出して」  「とんま、カス。キモい」  「なんだとコノヤロウ」  ……わざわざ届け物をしに来た人に対してあまりにも酷い扱いである。  私はわざとらしく舌を出し、部室から出て行こうとした。  「とんま」  「なぁんだよぉ!」  まだ馬鹿にする気なのか、そう思い頬を膨らせて、振り返る。  だがそこにはもう軽蔑の眼差しはなかった。  「わざわざ悪かったな。サンキュー」  そう言って書類を拾いながら、松井はニッと笑った。  「別に…………」  妙に恥ずかしくなった私は、少しうつむいてそう呟いた。  
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