お菓子業界の陰謀の活用法について

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       吹奏楽部のリーダーである、松井。  リーダー補佐……という名のパシりの、私。  トランペットが上手い、松井。  下手くそで演奏することすらやめてしまった、私。  校門の前に私と松井。  面倒な事務仕事からようやく解放され、二人同時に大きく溜め息を吐いた。  「じゃあな。お疲れ」  「お疲れさま。今度からは事前に連絡してくれると助かりまぅわ!!」  段差に気付かず、30cm程墜落した私。  その横を松井が呆れ顔で通り過ぎて行った。  「おいおい、気をつけろよ。とんま本当に頓馬だよな。この前だって階段から落ちて――」  「うるせいやい! ほっとけ」  いや、現に放っておかれている訳だけど。  「あー。朝飯抜いたから腹減ったわ。俺先帰るぞ」  こちらのことなどお構い無しに歩いている松井の背中が、どんどん遠くなっていく。  自分から呼び出しておいて。  「おいっ待ておま」  「あ――――?」  気だるそうな声。まだ何か用があるのか、と言われているようだ。  「……また明日ね」  少しむくれて私は呟いた。  「おう。今日は助かったよ。ありがとな」  松井はそう言うとひらひらと軽く手を振って、さっさと帰ってしまった。  「……私、大して仕事してなかったんだけどなぁ」  まったく。勝手な奴かと思えば、意外に律儀だったりする。  ふと辺りの静けさに気付いたら、なんだか急に寒くなってきた。  「あーあ。私も帰ろうかな……」  当然その言葉に対する返事をする人はいない。  一人取り残された私は、もう一度深い溜め息を吐いた。  あの時。  『とんま。悪いけど、この書類預かっててくれないか? 俺だと無くしそうだからさ』  『……別にいいけど、私に預ける方が無くなる率高いんじゃない?』  あいつはあの書類を自分で持ってることもできたはずなのに。  『なーに言ってんだよ。確かにとんまは頓馬だけど、さ』  押し付けられるように手渡された書類の束。  『大丈夫だろ。おまえにならまかせても』  あいつは本当に持ってるのが煩わしかっただけなんだと思うけど。  それでも、私は。  少し、嬉しかった。    
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