お菓子業界の陰謀の活用法について

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       気が付けば、家を飛び出し走っていた。  目的地? 考えてないよ!  寒くないのかって? 寒いよ!  だけど、じっとはしていられなかった。  この感情を、絶望を、想いを。  どうすればいいかわからなかったから。  ああ!  気付きたくなかった  気付きたくなかった  気付きたくなかった……!!  私はただ、松井と適当に会話して、なんとなく一緒にいられれば良かっただけなのに!  一緒にいるだけでは、大切な存在にはなれないということはわかっていた。  しかし恋人になれば、一緒にいるだけではいられないことも知っていた。  そして何より、あいつが私を好きになることなんてないとわかっているのだ。  いつも、一緒にいたのだから。  「……ケホッ……はぁー……はぁー……」  いつの間にか、私はあの海岸に来ていた。  肩で息をする私の口から、白いもやが静かに現れては消えていく。  夕日の沈んでいく海岸は、少し暗くて、悲しくて、とても綺麗だった。  それが無性に。  「…………腹立つ」  どこまでも広がる海をキッと睨み付けて、仁王立ちする私。  大きく息を吸い込む。  冷たい空気が、肺を、胸を締め付けて。  「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」  力の限り叫んだ声は、波にさらわれて緩やかに消えた。  そして何事もなかったかのように、海は揺れ、日は落ちていった。  こうして吐き出してみたらだいぶスッキリしたけれど。  やっぱり少しだけ切なくなって。  日が沈み、赤い光を失った浜辺には、ただ波の音と立ち尽くす私が取り残されていた。
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