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生徒玄関前に毎年貼られるクラス編成の紙には、例の如く人だかりが出来ていた。
一喜一憂。
まさにその表現がピッタリ合うような光景が目前に広がっている。
「えーと…あ、私はA組だって!」
樹佑が隣で叫ぶように言った。
「あ、じゃあ私は…」
A組から順に、と眺めていると樹佑の名前から一個飛ばして私の名前が。
「あ、樹佑と一緒のクラスだ」
「え、本当!?やったあ!!」
飛び跳ねて私達は喜び、私は再度クラス表に目をやった。
何気なく男子の名前も確認する。
そして、とある名前の箇所で私の目は釘付けになった。
立木和斗(たちぎかずと)。
その名前は、私が中学一年生の時に好きだった人の名前だ。
まさか、一緒のクラスになるなんてなあ。
そういえば一年生の時はよく話し掛けてきたっけ。
それがきっかけで好意を抱いたんだ。
懐かしい。
まあ一年もブランクがあるから流石に話し掛けてはこないよね。
私も今は別に好きじゃないし。
「茜、どうかした?教室行かないの?」
「あ、ぼーっとしてた。じゃあ行こっか」
「うん、行こう」
しまったしまった。
思い出に浸ってる場合じゃなかった。
立木君のことは良い思い出として胸にしまっておこう。
あんまり恋愛話は得意じゃないから、一々話に出したくもないし。
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