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ドール「……まあどうするか決めてなかったのは確かだけどさ、ほっとくこともできなかったんだよ」
スクラ「マスター……その体勢のまま進めるの……?」
ドール「心の傷は深いんだよ」
飼い猫の罵倒につけられた傷を抱えたまま俺は話す
ニット「ハッ、見かけはこうでも心は勇者です、ってヤツ?馬鹿馬鹿しい。そんなの、ただの下手な生き方だ」
心底見下した目でニットが俺を見る。いや体勢的にじゃなくて
チャイブ「む、その言い方はないのぜ。確かにチャイブ様のマスターは下手な生き方してるかもしれないけど、でも……」
ドール「ミスティフェアリー」
反論しようとしたチャイブを制し、俺は一つの名称を口にする
ニット「……あ?」
ドール「違った?亜人のフェアリー種、ミスティフェアリー。君の片親だと思うんだけど」
ミスティフェアリーは水の豊富な地に住み、水を食糧として生きるフェアリー種。大きさは人間よりやや小さいぐらいで『亜人』だから人や他の亜人と子をなすこともできる
フェアリー種特有の美しさと、何より食糧が水だけで済むことなんかから水の豊富な地の愚かな人間に主に愛玩目的で乱獲、飼い殺しにされて数は激減したと言われている
彼からは微かにその匂いがしたんだ。澄んだ水の、霧の、匂い
ドール「あんまり下手なとこ突き出して露見しちゃうと生きづらくなるだろうし……かといってあのまま見逃すのもどうかと思ったから、ついね」
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