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『今日は良く集まってくれたな』
太閤・豊臣秀吉の企画で行われた今日の茶会
上座で秀吉はニコニコ全員に笑いかける
和やかな雰囲気のまま始まった茶会だったが、吉継には一つ心配事があった
『何をボーっとしてるんだ?次は吉継の番だぞ?』
『……あっ、はい…。』
秀吉の声で我に返った吉継の前には秀吉が直々に点てたお茶の入った茶碗が置かれている
少し考えたが、茶碗に手を伸ばし一口飲んだ
『結構なお点前です秀吉様』
一口だけ飲んだ茶碗を次の人に渡し、秀吉に笑顔で会釈する
隣に座る武将の表情を目だけで盗み見、チクリと心が痛んだ
(こうなることくらいわかってたじゃないか…何を今更……)
隣の武将も、その隣も、笑顔で茶を飲んだフリをしているだけで茶碗に口を付けようとしない
吉継には原因がよくわかっていた
別に秀吉の点てた茶が悪いんじゃない、全ては自分のせいである
(…全ては僕の病のせい……)
きっと自分がこの場にいることさえ気味悪がられているのだろう
わけのわからない不治の奇病にかかり、肉が腐り、醜く変形した僕の身体は、巻きつけた包帯だけでは補うことは出来ない
誰もが気味悪がり、自分が感染することを恐れ近寄りたがらない
吉継は、小さくため息をついた
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