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(……僕自身ちゃんと理解してるじゃないか…何を今更哀しむ必要があるんだ?)
吉継は自分に言い聞かせるようにため息をついた
『……結構なお点前です』
凛とした声に吉継は我に返る
最後まで回ったようで、真向かいに座る男の前に茶碗が置かれていた
(…彼は……石田三成…?)
一瞬周りの空気が揺れる
吉継自身も息を飲んだ
『………あの男、アレを飲み干したのか……?』
下座の方から小さく囁かれた声
しかし三成本人はどこ吹く風という澄ました顔をしている
『それじゃあ今日の茶会はお開きだ!』
明るい声を残して出ていった秀吉を皮切りにその場にいた武将たちはそれぞれ席を立った
『三成殿………』
二人取り残された部屋で三成に呼びかける
それまで瞑目していた三成は片目だけを開いて吉継を見た
『何で、飲んだんですか……?』
『……何でって…?奇妙なことを問うんだな』
柔らかい微笑からは、先ほどの凛とした雰囲気は感じられない
(本気で、言ってるのか……?僕の醜い姿を見ていないはずはないのに、本気で………)
吉継は唇を噛み締めた
『………貴方は僕の病のことを知ってるんでしょう?』
『病?あぁ、知ってるさ』
『知ってて、飲み干したのは何故です?』
正直三成の考えがわからなかった
見ると三成は驚いた様に目を瞬いていた
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