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しばらく黙っていた三成は困ったような顔をする
『茶会にきたんだから茶を飲むのは当たり前だろう?』
『…僕が口をつけたんですよ…?』
拳を握りしめる吉継の頬に涙が伝う
いつだって自分は化け物扱いされていた
好きで病にかかったわけじゃない
病にかかる前まで親しくしていた人間も、少しずつ距離を置いた
吉継の心はボロボロになっていた
茶会だから飲んだなんて簡単な理由だけでは納得出来ない
『お前が何を気にしてるのか知らないが、私は病なんか気にならない』
ひたと見つめる強く冷たげな三成の眼差し
しかし吉継はその奥に隠れた彼の優しい眼差しを見た気がした
三成は吉継から視線を外しさっさと立ち上がる
部屋を出て行こうとし、振り返った
『お前、名前は?』
『僕は……大谷吉継…』
『ふーん、吉継ねぇ。俺は三成、石田三成だ』
三成は手を差し出す
包帯だらけの手をみて躊躇する吉継の手を無理矢理掴んで固く握りしめた
これが吉継と三成の出会いだった
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