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―岳side―
半信半疑のままネコは里桜の足元で、直接手からパンをもらっていた。
「岳君見て。
すごく可愛いよこの子。」
頭を撫でながら嬉しそうな里桜。
野良ネコを手懐ける天才なの?
「あ~あ…パン無くなっちゃった…。
ごめんね…また明日ちゃんとネコ缶買ってくるね。」
おとなしく里桜に撫でられてたネコ。
別れを察知したように静かに里桜から離れた。
「…ねぇ、そのネコにずっと餌あげるつもり?」
小さな歩幅に合わせてゆっくり歩く。
こんなこと空音にもしたこと無いのに…。
あ…空音は足が長いから遅れないのかもな。
「ん~…無事に赤ちゃんが産まれるまで…かな?」
「…ふ~ん…。」
ネコが里桜になついたら可哀想だな…。
里桜に裏切られたと考えたら、人に危害を加えるようになるかもしれない…。
別に…あのネコが気になってる訳じゃない…。
―里桜side―
無事に赤ちゃんが産まれれば良いという私の言葉に、曖昧な相槌をうった岳君は一人で何かを考えていた。
「………なに…?」
崩れない表情をガン見してたら岳君が口を開いた。
「…ネコ可愛かったよね。」
「…全然…。
別に俺はあのネコが気がかりだって訳じゃないよ。
野良は野良だなって思っただけで…。」
やっぱりネコのこと考えてたんだね…?
『別に』の言葉は岳君のあまのじゃくの前触れだよね。
なんとなく分かるようになってきたよ…うん。
「岳君、明日一緒にネコ缶あげに行こ?」
「…だから…気になってる訳じゃ…「さ、早速明日のネコ缶買いに行こう!!」
「俺はいいって……ぅわっ…!!」
岳君の手を勢いよくとって急ぎ足で歩いた。
「…はぁ……仕方ないな…。」
ため息をついた岳君だったけど、顔には少しだけ笑みを浮かべていた。
ネコが好きなら好きって言えば良いのに…。
恥ずかしいことじゃないでしょ?
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