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「ただいまー。」
「おじゃまします…。」
岳君に続いて邸に入る。
岳君はただいまって言えば良いっていうけど…なれないんだよね…。
「里桜様、岳様、お帰りなさいませ。
夕飯の準備は整っております。
お荷物をお預かりいたしましょう。
里桜様は準備ができ次第食卓へとお向かいください。」
なれた手つきで私の重たいカバンを手にとる柏木さん。
「…重くないですか?」
顔色一つ変えないなんて…逆に怖いよ…。
「このくらいでしたら全く問題はございません。
いざというときの為に身体は鍛えております。」
なるほど…。
でも…お願いしちゃって悪いな…。
なんて思いながら洗面所で手洗いウガイを済ませた。
日課だったことって自然とやっちゃうんだよね…。
一度部屋に戻って楽な服装に着替える。
「里桜ちゃんお帰り!!
夕飯食べにいきましょう?」
空音ちゃんは私がここに来て以来、部屋をこちらに移動した。
空音ちゃん曰く、せっかく同じ屋根の下で過ごすなんて、姉妹みたいなもんなんだから一緒に楽しくすごそうということだった。
ちょっと部屋が広すぎると思ってたから良かった。
「うん、行こっか。」
私は一人っ子だったから本当に姉妹ができたみたいで嬉しかった。
一度やってみたかった服の貸し借り。
お互いに髪を結ってあげたり、学校の話をしたり…。
後は一緒にテレビを観て笑って、寝るときは隣のベッドに向かって
『おやすみ』
の一言。
やってみたかったことのほとんどをやった。
なんだかとても新鮮でくすぐったかったけど楽しかった。
あ~ぁ…下に一人くらいは欲しかったな…。
「ん…?
ちょ…テレビ…。」
え?
私が幸せに浸っていると空音ちゃんが小さく呟いた。
『最新芸能ニュースです。』
字幕の部分には
『今話題の熱愛事件、謎の美少女は金目当て?』
の文字。
ニュースが始まると写し出された写真には目元こそ隠れているけど、どうみても私とだて眼鏡の岳君。
『【black】の後には【White Winter】に手を出した。
トップアイドルばかりを狙う金目当ての交際か。』
簡単にいえば、ザッとこんなことが言われていた。
「これって…。」
「「………。」」
空音ちゃんも岳君もまだ手をつけられていない料理から目を離して、静かにテレビを観ている。
もしかして…まためんどくさいことになるの……?
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