贈り物→有名人?

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外に出ると月明かりが綺麗な庭園を照らしていて幻想的に見えた。 白塗りのベンチに座る岳君。 私もちょっと遠慮がちにベンチの端に座った。 夏の終わり…季節が秋の準備をしているこの時期の風は、湿り気もなくて少し肌寒いくらいだった。 こんな薄手の格好だもん…そりゃ寒いよ…。 岳君のいう通り…風邪ひきそう…。 「…だから言ったでしょ? これ、貸してあげるから着たら?」 「ぇ…でも…。」 岳君が羽織っていた少し大きめのカーディガン。 肩にかけられたけど…それじゃあ岳君が寒いよね…。 「…岳君…。」 「……っ…!!」 「こうすれば二人共暖かいよね。」 離れていた隙間を埋めて、岳君にくっついた。 大きいつくりだったカーディガンは私たち二人をちゃんと包み込んでくれた。 「…ねぇ……自分がやってることわかってる?」 「へ?…だから…二人で暖かく… …………ご、ごめん!!」 ふと横を向いたら至近距離に岳君がいた。 「っ!!」 離れようとした私の腕を岳君が掴む。 「待って…少しだけ…このまま…ダメ?」 高鳴る胸。 その瞬間、陸人さんと岳君が重なった。 「…ダっ……。」 ダメだって言えば良いのに…言葉にできない。 私には心に決めた人がいるでしょ? 「…ダ…メ…………じゃない…です…。」 また…陸人さんと同じことを繰り返すの? 最後には傷つけることぐらいもう学習したはずなのに…。 「よかった…。」 ホッとした顔の岳君。 だって…岳君が…言葉にできないくらい、今まで見たことがないくらいの寂しくて悲しい表情をしたんだもん…。 だから…未麗さん……少しくらい…良いよね…? 誰も見てない…知ってるのはお月様だけなんだし…。
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