序章:呼び方

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「呼び方はいいじゃないですか……」 私はお姉様っていうのに慣れちゃってるから…… やっぱり早苗お姉様って呼びたいな、なんて 「まぁいいわ そう呼びたいならそうで それで、誰か待ってるの?」 「はい、お姉様と待ち合わせです 一緒に外食です」 私がそういうと早苗お姉様は驚いたような顔をする 私とお姉様がまだ続いてるの意外だったのかな…… 私とお姉様別れる要素なんてないんだけど 「優姫ちゃん、まだお姉様って呼んでるの?」 ……? 何かおかしいのかな 「そうですけど……」 私には何がおかしいのか全然分からない お姉様はお姉様だよね? 「結婚してるのにそれ? もうとっくに呼び捨てとかにしてると思ってた」 お姉様を、呼び捨て……? そんなの出来るわけないよ お姉様のこと、ち、千鶴って呼ぶだなんて 「そんなの無理です!! 恥ずかしくて死んじゃいます!!」 「ってことらしいですよ」 不意に肩を抱かれる お姉様いつからいたんだろう…… この話しぶりからすると少し前からいたみたいだけど 「あ、千鶴お姉様ごきげんよう」 ……早苗お姉様も同じじゃん!! いや声には出さないけど 「ごきげんよう 私も優姫に呼び捨てで呼んでもらおうと思ったんですけど『恥ずかしくて死んじゃう』って言われたら強要できないんですよ 死なれたら困りますし……」 だって本当にそんなことしたら恥ずかしくて死んじゃうもん 「さん付けも駄目なんですか?」 「さ、さん付け……?」 私がお姉様を千鶴さん、って? なんだか余所余所しく感じる…… だからそれは嫌だな 「さん付けよりはお姉様の方がいいな、って思って今のままにしてるんです さん付けはなんだか他人のような気がして」 お姉様と同じ事思ってた やっぱり婦婦ともなればこんなものだよ 私とお姉様の絆は切っても切れないんだから 「よく分かりませんけど…… まぁ人の家庭に口を出すほど私は野暮じゃないので これからお食事なんですよね? 私はこれで失礼します」 早苗お姉様はそう一礼をして去っていく 早苗お姉様の方がルキアの癖治ってなくないかな 「優姫に呼び捨て、させたいわよね……」 お姉様がそんなことを呟いたのを私は聞き逃さなかった いや、聞き逃さなかったからどうっていうことはないんだけどね
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