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「どうだい、剣の調子は。道場の皆は元気にしているかい?」
山南の自室に通された俺は山南さんの質問に、はあ、とか、まあ、とか、つまりははかばかしくない生返事ばっかり返しながら正座を崩さずにいた。
はい、とにこにこ顔の山南さんがぬるめのお茶を出してくれる。
俺はそれには手をつけずに山南さんをまっすぐ見据えた。
「山南さん、帰りましょう」
茶をすすろうと両手で湯飲みを持った山南さんは、そのままの姿勢でぱちくりと瞬きを繰り返した。
その首が、きょとんという効果音が似合うかわいらしい動きで、かしげられた。
「なんで?」
ぱちくり。
「なんでって…」
俺は気抜けしてがっくりと肩を落とした。
「なんでってことないでしょう山南さん!みんなあなたの帰りを心待ちにしてるんですよ?」
うーん、と、真剣に考えているのかいないのか、呑気な声をあげて山南さんは手元のお茶をくるくるまわす。
頼むように山南さんを見つめる俺の視線に気づいて、山南さんは困ったように笑った。
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