The Last Memory

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俺が生きた道。 俺が生きたかった道。 生きるは『行きる』だ。 だからお前はお前の信じる道を行ったらいい、それが生きる事だと教えてくれたのは、 確か永倉さん。 彼は信心深い人だったから、よく坊さんに説教聞きに行ったりしてて、俺の百倍も万倍も物を知っていた。 「藤堂がそっちに行ったぞ!」 「逃がすな!」 歯がガチガチ鳴った。 さむい。 いや本当はさむくないのかも。 さむいのとは違う理由で俺は震えているのかも。 「逃げるか藤堂!」 「魁先生の名が泣く」 「所詮は裏切り者だ、斬れ!」 追ってくる人間の中に永倉さんを見つけたけど彼は口を一文字に引き結んだまま何も言わずに走っていた。 責任とか運命とか、これからとか、あの人の肩にはいつも色んなものがずっしりのし掛かっていて、重そうだ。 (出来ればそれ肩からおろすの手伝ってあげたいけど、おろしたあとどこに置くのって聞かれたら困っちゃうから、結局いつもそのまんまだった) 永倉さんは走っているけど、なんだかそうさせられてる機械みたいだ。俺を殺すの嫌なんだろうなあ。ゴメン、許して。今度お団子買ってくからさ。あ、無理か。仕方がないからちいちゃく振り向いて、永倉さんに手を振ってみた。ばっははーい。うわ、何でそんな泣きそうな顔するの。こっちまで悲しくなっちゃうってば。 そういえば俺を殺せって言ったのはやっぱり土方さんなのかな。あの人は嫌いじゃなかったんだけど、でも大嫌いになっちゃったな。 永倉さんにこうやって嫌な役全部押し付けて、今頃きっと副長室で悠々と報告書類を書き上げてるさ。 角を曲がって細い路地に逃げ込むと、原田さんが待ち構えていた。 「平助っ!」 声と共に突き出されたのは得意の槍じゃなくて、彼のぶっとい腕だった。 ぐいぐい引っ張られて走る。どう考えたって、逃がそうとしてくれてるのはわかるんだけど、でも副長にバレたら腹切らされるの原田さんなんだから、放っておいてくれれば良いのに。 「平助、今からでも遅くねぇ、副長に頭下げりゃ命までは取られねえよ」 原田さんが言って、声を詰まらせる。追手の足音が同じ路地に入ったのを感じて俺は原田さんの腕を振り払った。原田さんはちょっと、優しすぎるから心配だ。俺みたいなのにかまけて自分が危ない目に会う。 原田さんでも追手でもない横道に駆けた。
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