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灰色の空から白い、柔らかなものが降ってくる。それはすべてを等しく覆い、自らの色に染め上げる。
あれから、何年経ったのかな?
彼はどうしているんだろう?
元気にしているかな?
───私のことなんて忘れて、幸せになってくれることが、わたしの幸せです。
そう、彼に告げてここにいるのに、どうして、こんなにも彼への思いはこの純白の雪のように積もり続けるのだろう。
───会いたい。会って、触れあって、・・・言葉を交わしたい。
これは私が選んだ道。
私と彼は同じ道を歩むことをけしてできない。
もし、同じ道を歩めば、彼は私を置いていく。
そうしたら、彼は悲しむ。置いていかれる私を思って。
あぁ、雪よ。どうか、どうかその白さで、人間に恋した哀れな妖怪の心をも、白く染め上げてください。
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