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「蹄鉄?」
意外な答えに、星は疑問符を浮かべた。
「そうです。 私は馬の専門学校の出なんですけど、同期に装蹄士の道に進んだやつがいて、そいつに蹄鉄を変えてもらったらみるみる内に良くなっていったんです」
確かに歩様の矯正や、怪我の治療に特殊な蹄鉄を使うことはあるが、星はいまいち納得しなかった。
「だけど、あの馬は蹄鉄を使えないって知ってるだろ?」
蹄鉄は、蹄の神経の無い部分に釘を打って留めるため、馬は痛みを感じない。
しかし、あの馬は蹄が薄く、神経を避けて釘を打つのが難しい。
蹄は刺激を受けることで正常に伸びてくるのだが、あの馬はあまり動かないことが蹄の成長に影響を与えている。
星の言葉を聞いても、男性従業員は顔色を変えずに話を続けた。
「大丈夫です。 “エクイロックス”という特殊な蹄鉄は、釘を打たないで固定できます。 私の同期はフランスでエクイロックスの技術を学んできたんですよ」
エクイロックスは、接着剤のようなもので蹄にくっ付ける蹄鉄だ。
これは蹄の薄い馬にも使うことのできる便利な蹄鉄で、ディープインパクトなどの競走馬もこの蹄鉄を使っている。
その言葉に、星はわずかな希望を感じ、試してみることを決めた。
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