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車椅子に乗った、小学校高学年くらいの少年だ。
一人だけみんなから離れてそっぽを向いている。
星はその少年が驚かないように、少年の視界に入る位置に移動してから話しかけた。
「君は馬と遊ばないのかい?」
しかし、少年は全く反応を見せず、気難しい子だなと感じた。
それでも星は諦めずに、話を続けることにした。
「今日は馬に乗れるんだけど、どのこか気に入った馬はいるかい?」
優しく語りかけても、少年は興味を示さず、答えようとしない。
それを見ていたのか、少年の母親が慌ててやってきて、星に頭を下げた。
「すいません。 この子人見知りで。 アルフ、先生が馬に乗らないかって言ってるよ」
“アルフ”
珍しい名前だな、と星が思っていると、少年は不機嫌な顔をしながらやっと口を開いた。
「足が動かないのに馬に乗れるわけないじゃないか!」
その言葉は、重く鋭い形状をしていて、少年の心の闇を表していた。
“如月 或風”(キサラギ アルフ)
先天的に脚の動かない彼は、小学校低学年までは、普通の明るい少年だった。
だが、年齢も上がり、周りの友達も物事を自分で考えて行動するようになると、アルフを取り巻く環境は激変した。
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