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それまで俯いていたアルフの視線が、頻りにある方を向くようになったのだ。
「アルフ君、あの馬が気になるのかい?」
他の馬とは違い、一頭だけ馬房の中で座り込んでいる小さな馬。
すると、先程まで星の言葉には耳を貸さなかったアルフが、星の方を見て返答した。
『あのコには乗れないの?』
やっと喋ってくれたことに星は喜びを感じたが、同時に戸惑いもあった。
アルフが視線を送っている馬は脚が悪く、長い時間立っていることができないのだ。
しかし、ずっと馬房でじっとしていると、血の巡りが悪くなって脚が腐ってしまったり、心臓に負担がかかったりしてしまう。
だから担当者である星はその馬の脚のケアを欠かさない。
「あの馬は……」
脚が悪い。
星はその事実をアルフに伝えるべきか悩んだ。
そうやって星が悩んでいると、アルフは意外なことを口にする。
『あの馬、カッコいいなぁ』
その言葉は星に強い衝撃を与えた。
普通の人なら、馬なのに脚が悪いなんて可哀想、などと思うだろうが、アルフは違った。
脚が悪いことがどれだけ大変なのかわかっているため、その馬の苦労が伝わってくるのだろう。
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