最悪な朝

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コンビニやお店の中で、ホストに絡まれることはない。 おそらく営業妨害につながるからだろう。 だから、コンビニはモールの中の安息の場所。 ほっと一息ついて、お弁当を選ぶ。 節約のために作ろうとは思うけれど、中々早起きができずこうしてコンビニなどで買うことが多い。 電車通勤で職場まで一時間はかかるし、朝家を出るのが早く帰宅が遅いのだから仕方ない。 ……なんて、言い訳してみたり。 明日こそは早起きしてお弁当を作ろう。 心の中で、私は毎日そう誓う。 お弁当を決め、職場で食べるおやつも買って、ほくほくでコンビニを出ようとした時。 開く自動ドアの向こう左側、視界の端にホストが数人いるのをとらえた。 談笑しながら一服しているようだった。 視野に入っただけで、絶対に目線は向けない。 目を合わせちゃだめだ。 じろじろと値踏みしているかのようなホストたちの視線を感じたけれど、こんな時は知らない振りをするにかぎる。 無表情で顔も向けず、早足で彼等の横を通り過ぎた。 脱出成功……! 「ねぇねぇ」 突然後ろから軽い調子の声がして、びくっと肩を揺らして足を止めてしまった。 うまく逃げれたと思ったのに……失敗だ。 恐る恐る振り向くと、三人のホストたちがこちらを見ていた。 目が悪いためハッキリとは顔がわからないが、三人とも口元が笑っている。 馬鹿にされる……。 なんとも言えない、過去の嫌な感情が蘇る。 「……なんですか?」 ネガティブな気持ちになり、感情のない声で聞き返す。 すると、サングラスをかけたホストが微笑んで口を開いた。 「お姉さん、D?」 何を言っているのかわからず、首を傾げる。 「D……?」 「うん。お姉さん、Dカップ?」 その言葉で、やっと意味を理解した。 この人、私の胸のサイズを聞いてる! そう気づいた途端、恥ずかしさと怒りが沸々と湧き上がってきた。
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