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「バッカじゃないの!」
思いっきり冷たい視線と言葉を浴びせてやった。
その途端、彼の後ろで笑って見ていたホスト達の動きが固まる。
当の本人は全く気にもせず、口元に意地の悪そうな笑みを浮かべたまま話しかけてきた。
「ハズレかぁ……。じゃあ、Dより大きいか小さいかだけ教えてよ」
「ちょっ、レンさん酔っ払い過ぎですよー!」
固まっていたうちの一人が、堪えきれなくなったように間に入ってきた。
この失礼極まりないホストは、レンと言うのか。
「ごめんね、酔っ払いの言うことだから気にしないで。もう行っていいよ」
落ち着いた雰囲気のホストが、申し訳なさそうに謝ってきた。
「はぁ……」
納得はいかないけれど、一応謝ってくれたことで少し心が和らいだ。
酔っ払いならしょうがない……かも?
とにかく、これ以上関わらないほうがいいだろう。
「じゃあ、失礼します」
無理やり自分を納得させてその場を離れようとした時、後ろからヤツの声が聞こえた。
「やっぱCカップかー」
カッチーン。
……あったまきた。
怒りに肩を震わせながら、サングラスのホストに向かってズンズン歩く。
目の前まで来た時、ヤツの口元からは笑みが消え、頬をこわばらせていた。
サングラスで目は見えないが、それ以外のパーツから整った顔をしていることがわかる。
それを思い切り睨みつけながら、私は口を開いた。
「残念でした、ハズレです!ちょっと顔がいいいからって何やっても許されると思ったら大間違い。人のコンプレックスに触れないでよね!!」
それだけ言うと、ポカーンと口を開けたホスト達を背にして職場に急ぐべく全力で走り出した。
胸が大きいのも、私のコンプレックス。
身長153センチ、普通体系の私にEカップは大きい。
Cカップくらいがちょうどよかったと思う。
背が小さいから胸が余計に目立って、夏に薄着していると通りすがりのおじさんにジロジロ、ニヤニヤと見られたり、電車で痴漢に遭ったり散々苦い思いをしてきた。
だから私は、胸のことを言われるのも見られるのも大嫌い。
というか、コンプレックスを差し引いたとしても女性に対して胸のサイズを聞くなんてセクハラだし!
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