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「ふぅん……」
納得いかない様子で首を傾げるかなちゃんを見て、私は心配になってきた。
かなちゃんは恋に盲目なタイプで、最近彼氏と別れたばかり。
かなり尽くしていたみたいだけれど、浮気された上に乗り換えられて終わってしまったらしい。
痛い思いをしたのに、今は恋をしたくてしょうがないのだそうだ。
「かなちゃん、もっと気をつけて。男は見極めが肝心よ。もう騙されちゃダメ!」
私と同じことを思ったのか、田中さんが熱心にかなちゃんに言い聞かせる。
「大丈夫ですよぉ。田中さんは心配し過ぎですぅ」
「いや、私もかなちゃんはもっと気をつけるべきだと思うよ」
「えー、里沙ちゃんまでひどぉい。大丈夫だにゃん♪」
ぶりっこスマイルではぐらかすカナちゃんに、その場にいた一同で大きくため息をついた。
昼休みが終わって午後の診療が始まると、私たちは息つく間もないほどの忙しさに追われた。
「あー、疲れたぁ。もう九時近いし!」
クリニックのドアに鍵をかけながらぼやく舞ちゃんに、私とかなちゃんもげっそりとした顔で頷く。
今日は元々予約がびっしり入っていたのに加え、次々に急患が飛び込んできたため地獄のような忙しさだった。
主婦の田中さんは扶養範囲内で働いているため早く上がったけれど、それでもいつもより長く残ってくれたから助かった。
「お疲れ様でしたー。里沙子さん気をつけて帰って下さいね。またホストに絡まれたり何かあったらすぐ連絡下さい」
「うん……。舞ちゃん、ありがとう」
舞ちゃんの優しさにじーんとしていると、カナちゃんが胸の前で両手を組み合わせ、キラキラとした目で私を見つめた。
「里沙ちゃん、イケメンホストくんに会ったらカナに連絡してね。すぐ行くからっ」
「………」
君はイケメンホストに会いたいだけだよね、うん。
「じゃあお疲れ様でした!また明日ー」
手を振って、三人それぞれ帰路に着いた。
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