第二話 首都脱出と旅商人

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 腹を押さえながら、仰向けのまま地面を不格好に這えずり俺から距離をとろうとする男にあえてゆっくりと近づいていく。 「まっ、待ってくれ! 悪かったって! ちげぇんだよ、部下がどうしても女やりてぇって……!」  すかさず鳩尾を踏みしめた。 「がっ……!」 「苦しいか? ははっ、傑作だな。お前はこれ以上のことをか弱い人間に行ったんだ」  降りしきる雨さえ気にならないほどに、俺の感情は高ぶっていた。らしくない正義漢ぶった台詞をニヤニヤと吐き捨てながら男を見下す。 「仲間になすりつけたら、助かるとでも? 頭なら仲間の安全くらい願ってみろよ。んとに、男じゃねぇよ」  だから、と俺。 「その股にぶら下がってる汚い欲の塊は俺が切り落としてやる。良かったな。これで本当に男じゃなくなる!」  奴の息の漏れるような音の制止の声も聞き入れず、俺は残波黒刀を突き出した。肉を切り裂いた独特の感触を僅かに残し、残波黒刀は地面にまで突き刺さった。  男は、大きく目を見開き口をパクパクとさせていたが、あまりの激痛に声も出せず、そしてすぐに白目を向いて力なく地面に横たわった。
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