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話は飛ぶが、俺はアイザルの提案をのみ、命からがらあの場から逃走した。話をぶっ飛ばした理由は、事件もこれと言って無かったし、何よりが格好つかなかったからだ。威勢をはって森を後にしたが、さげすみの視線を感じた。
腹が立ったので、勿論其れ相応の対応をした。
それからは、白騎士の追跡を交わすために、単に逃げてきた道のりを戻り、北門からではなく東門からバグズドール城下町へ隠れた。
無事街に入り込んだ俺は、帝国に幾つかある自分の家に帰ることにも成功した。
もちろん、死にかけも見捨てずにだ。 応急処置として消毒液ぶっかけたら苦しそうにしてた。今はキツく包帯を巻いたこともあって、寝息も聞こえないくらい静かにしている。
「あー……、あぶなかった。でも生きてる」
部屋にある窓に目を向けた。そこには、疲れの見える黒い瞳をした俺の姿が僅かに反射していた。目にかかるまで伸びた黒髪を見て、切らなくてはと考えつつ、視線を先に、浮かぶ月へと送ったを
夜も明け始め空が白んできているため、月の色は淡くなっていた。
少しタイミングが遅れた様だが、ガラスのコップにタフガイが最後まではなさなかった酒を並々とつぐ。
「……旨え」
白む空を見ながら、酒を飲み干し、どうやってバグズドールを脱出するか頭を回し始める。まだ戦いは終わっていない。
***
その頃
「本当によかったのですか? ヤツらを逃がしてしまって」
黒騎士の一人がアイザルに訪ねた。
「かまいません。後からいくらでも殺せます。……白騎士に渡る方がよっぽど厄介だ」
「いえ、炎玉ではなくて……。有限の魔術師が去り際に残波黒刀を……」
「な! ……本気で消さなければならない様ですね。今すぐにでも」
夜は更けゆく。様々な思惑を残して。
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