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「あれ? ここはどこ? 俺は……俺だな」
開口一番、訳の分からないことを言い放ったのはお馴染みのタフガイ(仮名)である。ツンツン立ち上がった茶髪に同色の瞳。歳をとればとるほど渋みを増しそうな、そんな顔立ちだ。上半身は服を着ておらず、かわりに腹部に何重にも包帯が巻かれている。下半身は昨夜同様、黒騎士の証の漆黒の鎧に身を通している。
昨夜の騒々しい事件から一転、爽やかな朝を無事に五体満足で迎えることができたわけだか、仮にも実力派魔術師で名の通る俺にしては、余りにもお粗末な出来の仕事だった。
スタートで体制を崩して、立ち直る事が出来ないまま、転がる様にゴールしたようなものだ。
昨夜のことを思い出し、憂鬱な気持ちに浸っていると、見慣れぬ風景にあたふたしていたタフガイだったが、しばらく部屋を見渡して 、椅子に腰掛け珈琲を飲んでいる俺の姿を確認してから。
「あぁー!」
騒々しく叫んだ。俺は黙って耳を塞いだ。
「お、俺が生きてるってことはお前、黒騎士に勝っちゃったの!?」
「ま、まぁな」
実際は協力して貰うと言う屈辱的な最後ではあったが、結果的に逃げ切れたわけだし、これ以上この話をするのは精神衛生上よく無い。
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