第六話 空の賢者と交戦の思惑

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 更に圧倒的カリスマを誇っていたヴァロージャの失脚は、元々複数だった過激派の分裂を加速させる。  そこに目をつけた穏健派ユーリの手腕で、過激派はどんどん取り込まれ、最後まで懐柔されなかった派閥も、不祥事や内部分裂によって衰退の一途をたどることになった。  こうして、ルーシアは内部崩壊の危機を脱した。  そこには、アイザル・ル・ルマーニオを筆頭に、複数の黒騎士の功績が認められたが、半ば強引だったヴァロージャ拘束が、後に公正を尊ぶ帝国において問題に上げられることになった。       ***  ルーシア西方の街ベルミ上空突如飛来した空飛ぶ島は、八月にもかかわらず、寒波を引き連れていた。  突然の冬の到来に、ベルミの住民は皆堅く戸を閉ざしていた。元から寂れていた街は、凍りついてしまったように、静まり返っていた。
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