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エルフが昔住んでいたという言い伝えが残る村のはずれにある森。
朝もやの残る早朝、村の長老が日課の薬草摘みをしていた時、かすかに赤ん坊の泣き声が奥の方から聞こえて来た。
「おや?」
長老は声のする方へ近づく。
ひときわ大きな古木の根元に赤子が置かれていた。
不思議なことに今まで葉をつけたのを見たことのなかった古木に、一夜の内に青々とした葉が生い茂り朝露をたっぷりと含んで、つやつやと輝いていた。
長老は、その葉を手に取った。
「これは…古文書に載っていた幻の世界樹の葉…」
長老は赤子を抱き上げた。赤子は真っ白な布にくるまれていた。
そして胸には不思議な光を放つペンダント。
長老は誰に言うでもなくつぶやいた。
「この子はわしが育てますじゃ。大切な預かりものじゃ」
その場を立ち去ろうとした時、赤子が両手を伸ばし空に向かって笑い、葉に触れた。
そこに一輪の真っ白な花が咲いた。
その花は一瞬の内に花びらを落とし、赤子の胸へ吸い込まれる様に消えた…。
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