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Ⅰ
「シーク… 行っちゃうの?」
クリアの大きな目から涙がこぼれ落ちた。
「ごめん。母さんの故郷に行く事になった」
シークはぎゅっと握りこぶしに力を込めて、泣くまいとした。
「これ、やる」
シークは一本のリボンを手渡した。クリアは、そのリボンを自分のお下げ髪につけた。
「似合う?」
クリアは笑顔で聞いた。
「うん」
小さくうなずくとシークは待っている母親の元へ走った。
「さようなら、シーク!」
…… 「あ、また夢」
ここの所、続けてシークの夢を見る。
森の世界樹が朽ち果てて長老は何か災いが起きる前触れではないかと心配していた。
村は、いつもと同じはずなのに何か押しつぶされそうな嫌な予感が長老にもクリアにもしていた。
「クリア… 世界樹の葉を全部、薬にしてしまおう」
クリアは長老の顔を覗きこんだ。
「お前も感じておるんじゃろ…この嫌な空気を」
二人は一日中、薬作りを続けた。
「よし!これだけあれば… 。わしの酒のビンに入れておこう。
これは村のみんなの分じゃ。あとはクリアお前の分じゃ」
「おじいちゃん、やっぱり…」
クリアは世界樹が枯れた時から自分が、この村を去る日が近いと感じていた。
「旅支度をしておいた方がよい」
長老から世界樹の葉で作った薬を受け取り、自分の部屋に持って行った。
クリアは窓から外の景色を眺めた。
森へと陽が傾き、美しい夕焼けが村を照らしていた。
東の空には夕月がかかり、あと数時間もすれば湖に美しい姿を映すだろう。
クリアは、この美しい村と村人達が大好きだった。
なぜ自分がこの村を去る事になるのか…
クリアは思いを振り払うように頭を振って、旅支度を始めた。
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