Happy White Day!

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「君――」 「おにいちゃん、どこから来たの?」  少女は、俺の言葉を見事に遮り、自分の意思を押し通してきた。  きっちりとしたジーンズに、ファーのついた黒いジャケットを着ているあたり、とてもボーイッシュなイメージが刷り込まれる。袖が伸びた紺のセーターに、色あせたクリーム色のマフラーを巻いている俺なんかよりは、よっぽど男らしい。 「俺は、こっから六時間くらい電車やらバスやらを使わないと行けない所から来たんだよ」  我ながら意地悪な教え方をしたもんだ、と、何故か自負したくなる。  そんな内心はお構い無しに、少女は偉そうに、ふーん、と頷いた。  加えて、少女は俺のことをチロチロと見回しながら、疑惑の目をぶつけてくる。  俺、何か悪いことしたっけか。 「それで、そんな遠いところに済むおにいさんが、こんな所に何の用?」  いつの間にか、俺が警察に事情聴取されているかのような雰囲気になってしまった。  少女に問いたい、お前は何様なのだ、と。 「俺は実家がココでね」 「じゃなくて、なんでこんな墓地に」 「ああ、もう。昔の友達がココに眠ってるからだよ、分かった?」  少女の質問攻めに、俺は半ばイラつきながら答えた。  その瞬間、少女は俺の隙だらけの隙をついて、クッキーを奪い取る。  奪い取ったそれを、少女は自らの頬にあてがうようにしてみせ、その仕草がなんとも子供っぽい。 「こら!」 「今日は何の日だか、私知ってる。彼女さんかなんかに、この愛がたっぷりつまったクッキーを渡そうとしたんじゃないのかね?」  いきなり、得意満面の笑みを浮かべる少女に、俺はイラつきと呆れを感じながらも、面は仏のままをキープしていた。  相手は子供だ、抑えろ俺。 「そんなんじゃねえよ、ある約束があってだな」 「ほうほう、言ってごらんなさいよう」  必死に抗議する俺をからかってか、少女は小悪魔的笑顔で顔をいっぱいにする。 少女は多分ドSだ、いや間違いない。生意気な笑顔を浮かべている少女は、何か幸せそうで、少しだけ微笑ましい。 「負けたよ、聞いてから後悔しても遅いからな」
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