1人が本棚に入れています
本棚に追加
=====
あれは、どれくらいだったかな。そうだ、今から丁度八年くらい前……俺がまだ十歳くらいの時。
俺の隣には、いつも一人の少女が居た、そう、丁度君と同じくらいの歳だったかな。
その少女は男勝りで、ガキ大将的存在で。俺はその『しもべ』みたいなものだったわけだ。不思議と嫌では無かったよ、おっと、俺を変態的な目で見るなよ?
アイツはとにかく、明るくて強くて、自分の意思をしっかり持った子だった。憧れだったよ、俺は男のくせに弱くてさ。
それである日、アイツは言い出したんだ。
「ねえ、ホワイトデーって知ってる?」
「ああ、バレンタインデーのお返しにってヤツでしょ」
放課後の、何でもない帰り道での言葉だった。
俺の言葉を聞くと、アイツは目を光らしたっけな。アイツは俺の親が作るバタークッキーが大好きだった。
でも俺の母さんは面倒くさがりだから、そのクッキーが作られることは稀だった。即ち、アイツがそのクッキーを口にする機会は少なかったわけだ。
「よおおし、もうバレンタインデーは過ぎちゃったけど、明後日のホワイトデー必ずもってきてね! あたしもチョコレート持ってくるから!」
アイツはそう、元気に、声色高々にそう言った。
俺はというと、呆れというか、やれやれと言ったふうにその言葉を飲み込んでいた。
そして俺達は、いつも川べりに二人で行って、大好きなチャンバラをして遊んだ。二人とも泥だらけになって、俺にいたっては転びまくってあざだらけになって。それでも、本当に楽しかった。
白辰川と呼ばれる川のへりは広く、別段危険では無かったため子供達の絶好の遊び場だったんだ。
緑色の短い草の上に被さった雪の原。とても幻想的だったけど、その頃の俺には遊び場程度にしか見えなかったな。
最初のコメントを投稿しよう!