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「ダメだよな、俺……」
俺は、あのときのことを思い出し、それを吐き出した。
呪うべきは、自分。弱い自分。
弱い自分が、アイツを殺したのだと。
外気は凍てつくように寒いのに、手にはじっとりと汗をかいていて、俺はその手を額へあてがった。
「あんたはまた泣くの?」
「え……」
いつの間にか伏せていた目を上げ、隣を見ると、少女が悲しそうな表情で俺を見ていた。
その表情は、カリカリと俺の心臓をひっかく。
「綺麗な彼女もできたじゃない。それなのに、そんな浮かないかおして。情けないなぁ」
少女は、悲しげな表情から一転。ニヤリと怪しい笑みを浮かべて見せた。
俺は、何がなんだか分からなくて、只呆然としていた。
「あんたは昔っから忘れっぽくて、思い込みが激しくて。どうせ、あたしが死んだこと自分のせいだと思ってるんでしょ。」
小さな人差し指が、俺の鼻に触れる。寒さで感覚を失われているのか、その体温を感じることが出来ない。
「でも残念。それは思い違い。あたしは自分の意思であんたを助けようとした。あたしの勝手な約束に唯一付き合ってくれていたあんたを」
鼻に触れていた指は俺の頬へとすべり、もう片方の手も俺の頬を包んだ。
真っ直ぐ、見据えることで思い出す。アイツの顔と、重なる。
「私の我侭をずっときいてくれた。理不尽なのに、嫌われても良いくらいなのに、ずっとそばに居てくれた。今まで、ずっと、ずっと。」
震える声で言って、ふわっと、空気のように俺の体を抱きしめようとする少女。しかし、その感覚は凍りついたままで、俺達は何も感じられない。抱き返そうとするも、その腕は虚しく自分の体を包んだ。
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