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「遅れました!」
競技場に着いた奏は鈴果を背負ったまま入っていくと、山下教官がもの凄い形相で睨みつけた。
それに鈴果は怯えたように奏の背中に隠れる。刹那は既に到着しており、周りの生徒の中に紛れていた。
「何で遅れた?」
怒気を含む声に生徒諸君は怯え、中には震えている者も居る。その中で奏は平然として、考えていた言い訳を述べていた。
「鈴果が足を挫いてしまって、背負って来たら間に合いませんでした。一緒に来ていた有松刹那くんが置いて行ってしまったので、男手が無くて僕が背負って来たらやっぱり早くなくて……。すみません。」
いかにも刹那に非があるような言い訳に刹那は慌て、周りの生徒は刹那を非難の目で見ている。
これが奏の仕返しなのだと刹那が気づくわけもなく、「でも刹那くんを責めないで下さいね?」という奏の言葉に山下教官はため息と共に許した。
「奏!何やねん、あの言い訳。」
「僕らを置いて行ったのは事実ですから。」
小声でそう言ってくる刹那ににこやかと奏は返すと、山下教官の声に耳を傾けた。
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